「藤娘きぬたや」誰も創ることが出来ない絞りの秘密
誰も創ることが出来ない絞り、誰も創ろうとしない絞り
近年注目を集めている「藤娘きぬたや」。
絞りは古来より人々の心に潤いと安らぎを与え続けてきました。
そんな絞りの美を極めるきぬたや。美の秘訣はどこにあるのでしょうか?
藤娘きぬたや「疋田絞り」
この2つの絞りの違いがわかるでしょうか?
どちらも鹿の子絞りにはなるのですが、この違いは「藤娘きぬたや」ならではのこだわりがあります。
正解は、、、
上の絞りが「疋田絞り」で下の絞りが「4つ巻き絞り」です。
一般的には下の「4つ巻き絞り」を「疋田絞り」と呼ぶことが多いですが、
絞りを極めるきぬたやでは上の絞りを「疋田絞り」と呼んでいます。
疋田絞り
「疋田絞り」とは絹糸で12回巻きます。生地を4つに折り、先端を45°にひねり、一粒に12回絹糸を巻き付けます。
12回巻くことで先端の粒が限りなく小さくなります。
絹糸で12回も巻き上げる技術は、長年の経験で身につくようなものではなく、職人さんの才能や感覚、適性があってこそだそうです。
誰も真似できない絞りとはまさにこのことですね。
どうしたらこんなに細かい粒に12回も糸を巻きつけることができるのか人間が為せる技とは思えません。。
4つ巻き絞り
「4つ巻き絞り」とは綿糸で4回巻きます。
こちらは、木製の絞り台に専用の針を設置し、その針に布地を引っ掛け、生地を折り、綿糸で4回巻きます。
上の「疋田絞り」に比べて先端の点の面が丸く、面積が広くなります。
「疋田絞り」と「4つ巻き絞り」どちらも使用することで作品に立体感や奥行きを生み出しているのです。
一目絞り
友禅では糸目にあたる一目絞り。
疋田絞りは面の部分の絞るのに対し、一目絞りでは線を表現するために用いられます。
線上の印に沿って生地を爪先で摘み、細かく四つ折りし、糸で2回ほど巻いていきます。
きぬたやの一目絞りは誰も真似できない細かさと繊細さを誇ります。
「疋田絞り」「4つ巻き絞り」「一目絞り」それぞれ職人がいて、分業しています。
一つ一つの絞りを極めることで最高峰の絞りが誕生するのです。
藤娘きぬたや 絞り製作工程
最高峰の絞りの技術力だけでなく、意匠力、染色の技術も一級品です。
すべて自社による一貫した作業を行えるのもきぬたやならではです。
絞りの工程だけでも大変な時間と労力を要するので、一つの作品を制作するのに2年以上を要するものも数多くあります。
こうしたそれぞれの工程を熟練した職人が携わることで「藤娘きぬたや」の絞りは生まれるのです。
以上ここまで藤娘きぬたやのこだわりをご紹介してきました。
いかがでしたでしょうか?
時代を越える絞りの美
近年、インクジェットによる技術も進歩し、絞り風の表現をしたり、ぱっと見では見分けがつかないくらいのものもできてきています。
しかし、このような職人の技術が凝縮された美の極致には、機械では創ることのできない美があります。
目で分かる細かい表現だけでなく、言葉で説明できない美を感じることができます。
時代を越えて人々を魅了し続けてきた絞り。
ぜひこの機会に「藤娘きぬたや展」へお越しいただき実際の目で確かめてみてください、
蝶屋 山本