「総絞り」の振袖って? 価格は?種類は?注意点は? 絞りの最高峰「藤娘きぬたや」を紹介!
「絞りの振袖」「総絞りの振袖」は、近年注目を集めており、当店でも問い合わせが増えている商品の1つです。
今回は、「絞り」というものを歴史から紐解いていきながら絞りの魅力、どこで買えるか?値段はいくらか?絞りの振袖についての注意点など深堀りしていこうと思います。
絞りの振袖も多種多様ですので参考にしていただければと思います。
目次
そもそも「絞り」とは?
「絞り」は、人類最古の染色法であり、一粒一粒に職人の手間が込められた美の極致です。
本来は「絞り染め」と称されますが、「絞り」と略されることが一般的です。
「絞り染め」は、布の一部を糸で括ったり、専用の器具を用いて挟んだり、折ったり、縛るなどの方法で防染し、その部分が染まらないようにすることで模様を作り出す技法のことです。
最古の染色法「絞り」の歴史
絞りの歴史は、紀元前までに遡るともいわれ、世界各地で様々な絞り染めによる作品が残っています。
日本においては、6,7世紀にはすでに絞りによる染色が行われていて、正倉院にもその作品が多く所蔵されていますね。
また、奈良時代を代表する模様染色法として、「纐纈(こうけち)」、「夾纈(きょうけち)」「臈纈(ろうけち)」の3つがあります。
これらを総称して「三纈(さんけち)」と言われています。
現在の絞り染めは、この三纈のなかの「纐纈(こうけち)」を指すそうよ。
絞り染めは、奈良時代から中世まで表舞台に出ることはありませんでしたが、室町時代から安土桃山時代にかけて誕生した「辻が花」が一世を風靡します。しかし、江戸時代の「友禅染」誕生により急速に廃れてしまいます。
「辻が花」は、現存する作品や定義づけの根拠となる資料も少数で謎に包まれていることが多いので「幻の絞り」「幻の染物」と言われているのです。
江戸時代には、鹿の子絞りで絹の生地全面に施された「総(疋田)鹿の子絞り」が大流行し、贅沢品として奢侈禁止令などで禁止されるまでになりました。
当時上流階級で大流行となった「総絞り」町人女性の憧れの的だったわ。
そして、京都や江戸など以外の地方でも「有松絞り」をはじめ、綿に施された絞りが、土産品として庶民のなかでもブームになりました。
江戸後期から明治にかけて日本各地で絞りの産地が生まれますが、激動する時代のなかで現存する主な絞り産地としては、京都の「疋田鹿の子絞り」愛知・名古屋の「有松・鳴海絞り」のたった2つのみになってしまったのです。
現在も総絞りの振袖は高級品として、近年改めてその価値が見直されています。
振袖にみられる絞りの種類について
絞りには、約100以上の種類がありましたが、後継者不足などの問題から減少に一途をたどっています。
ここでは「辻が花」「鹿の子絞り」などをはじめいくつかの絞りの種類を紹介していきます。
「辻が花」
現在の定義としては「絞り染めを基調として、描き絵・摺箔・刺繍などを併用したもの」と一般的には定義づけられています。
しかし、現存している資料不足によってはっきりと定義することはできません。「幻の染物」と言われる所以です。
手作業による辻が花の特徴
・「カチン描き」
繊細な文様表現を墨の描写で表すのが特徴です。
・「縫い締め」
模様の輪郭に細かい縫い目(極小の穴)がみられるのが特徴です。細かく縫い締めて絞ることで多様な模様を表します。
模様の輪郭にシミがでないように模様を表現するには、針目を細かく縫い絞らなければなりません。そのため高度な技術が求められるのです。
「から絞り」「プリント」による辻が花の特徴
現在振袖などでみられる「辻が花」といわれる商品の多くはこの「空絞り」タイプか、インクジェッタによる「プリント」タイプのものです。
「から絞り」は、先に絞ってから染色するのではなく、既に染めたものに後から絞りの加工を施したものを指します。
現代では、このような模様のことを「辻が花」と称していることが多いようですね。
輪郭に極小の穴がないものがほとんどみたい。
「鹿の子絞り」
この鹿の子絞りは、現代一番メジャーな絞りです。
◇の中の点々が子鹿の背中の斑点、まだら模様に似ていることから、「鹿の子絞」として呼ばれるようになりました。
(※「鹿の子絞り」の中で主に京都で生産されたものは「京鹿の子絞り」と呼ばれ、1976年(昭和51年)国の伝統工芸品に指定。)
この鹿の子絞りには約50種類もの技法が存在します。
「疋田(ひった)絞り」
疋田絞りは、鹿の子絞りの技法の一種です。「疋田鹿の子」「匹田鹿の子」とよばれることもあります。
なかでも指先の手作業だけで絞り上げるものと専用の器具を使用した2種類があります。
器具を使った「機械(疋田)鹿の子絞り」は、木製の絞り台に生地を引っかける鉤針をつけた器具を使用します。
(※この機械絞りのことを疋田絞り、手作業のみによるものを本疋田絞りと称するところもありますが、ここでは手仕事によるものを疋田絞り、機械によるものを機械疋田鹿の子絞りとします。)
ただ機械といっても完全な自動化ではなく、こちらも手仕事を要することに変わりはありません。
手仕事による疋田絞りは以下のようにつくられます。
1・布を斜めに延ばし、4つ折りにして先端をつまむ。
2・つまんだ先の粒を右手前の方へ少しねじるように戻して先に絞った粒と直角に開くようにする。
3・糸を根元から上へ順に4回巻く。
4・最後に2回括る。
4回巻きの疋田は通常、絹糸より太い綿糸を使用することが多く、「四つ巻き絞り」と称されることもあります。
疋田絞りと本疋田絞り
「疋田絞り」と「本疋田絞り」何が異なるのでしょうか?
これは、一粒に対して綿糸や絹糸を巻きつけるの回数によるもので、本疋田は8回以上。疋田は一般的には約4回とされています。
(※メーカーや産地、店舗などによってこの回数や規定は異なることがあります。)
巻きつける回数が多いほど先端の粒が細かく、粒が立ち、白地が鮮明に浮かび上がります。
のちほど紹介する絞りの最高峰「藤娘きぬたや」の本疋田絞りは、絹糸で12回巻いていて他を追随させない圧倒的な技術力を誇っています。
本疋田による総絞りは、製作に約2年以上かかり、約20数万粒以上の絞りが施されるため、大変貴重で高価な品となります。
一般的な疋田による総絞りでも約1年ほどはかかるとされています。
気の遠くなるような作業だわ。
「一目絞り」
「人目絞り」は主に模様の線を表現する際に使用されます。
本疋田絞り同様、指先と絹糸のみで括る高度な技術です。こちらは粒が細かいため一粒につき2回括ります。
写真は、藤娘きぬたやの「人目絞り」と「本疋田絞り」です。
帽子絞り
図柄の裾部分に平縫いし、糸を引き締め根本を糸で巻き、その上からビニールで包み込み糸で巻き上げ締める技法。
絞る部分の大きさによって大帽子・中帽子・小帽子と分けられます。
桶絞り
安土桃山時代から伝わる伝統的な絞り技法。
底のない約25キロもある桶の中に染めない部分の生地を入れ、染める部分は外に出して蓋を紐で堅く締めて桶ごと染料の中に浸し染める方法です。
非常に高度な技術力が必要とされ習得には何年もかかるそう。
「プリント絞り」「から絞り」
「プリント絞り」の特徴は、凹凸がないことです。
同じ凹凸のない絞りでも、友禅染めによって描かれた疋田模様のようなものと見分けるためには裏地をみると一目瞭然です。
友禅染めによって描かれた疋田模様の場合だと裏地まで染料が浸透していますが、プリント絞りの場合は、裏地が白いです。
(※仕立て前の仮絵羽商品だと裏地が見えますが、仕立て上がっていて裏地がついているものはこの見分け方がでできません。)
現代はインクジェッタの技術も進歩していてこの見分けも難しくなってきているぞ。
また「から絞り」の特徴は、先述したように細かい針の穴が見られないことです。
後加工のため糸による括りの必要がないためです。
総絞りの振袖の値段は?
総絞りの値段は、購入の場合、約30万円~。
レンタルの場合、約10万~50万円が相場でしょう。
購入かレンタルか?どのクラスの絞りなのか?どのくらい絞りが施されているのか?国産なのか?海外産なのか?で価格は大きく変わってきます。
いづれにせよ総絞りの振袖は、職人による高度な技術力、手間と時間(約半年~1年以上)がかかっているためどうしても高価になってしまいます。
そのためレンタルでの取り扱いはあまり多くはありません。
また、本疋田絞りの総絞りとなれば、一般的な疋田による総絞りの数倍数十倍することもあります。
絞りの最高峰メーカー「藤娘きぬたや」の振袖の価格は、約200万~1000万円みたい。
総絞りの振袖を安く買うためには?
高価な総絞りの振袖。ほしいけど、高く手が届かない。そんな方にできるだけ安く購入、レンタルする方法をご紹介!
①買取仕入れをしている呉服・着物専門店で買う
買取仕入れをしている、常時在庫としてかかえている呉服専門店舗での購入をおすすめします。
百貨店や展示館などは主に「委託販売形式」なので中間マージンがかさみ販売価格が釣り上がります。
このため同じ商品でも価格が50万円、100万円も違ってくるということもあるのです。
また、一般的に古い年代モノは割安になる傾向ですが、総絞りの振袖はそこまで流行に左右されにくい商品なので、むしろ年代モノのほうが価値があったりすることもあります。
②部分絞りものを買う
総絞りではなく、部分絞りのものになるとリーズナブルな価格帯ものが増えます。
「辻が花調」などの一部に絞りが施されたもの、「プリント絞り」や「から絞り」のものなどは、製作コストを抑えることができるためレンタルでも多く見られることができます。
また、中国などアジア諸国で生産することでさらにコストを抑えたものもあります。
③中古品を買う
ネットなどでよくみかける中古品などはもちろん新品より割安です。
ただ、写真だけでは状態がわからない。質感がわからない、など不安要素も多くあります。
また、着物は寸法があるので特に身丈、裄など合わないこともあるので注意が必要です。
総絞りの振袖の魅力
ここでは絞りの魅力を3つご紹介します!
①個性的で着る人を引き立てる
人とあまりかぶりたくない方にも総絞りの振袖はおすすめ!!
総絞りの振袖は高級品ということもあり、流通している数も多くありません。
小物などで個性を出しやすいことからも着る人を引き立ててくれるのが総絞りの魅力のひとつ。
②次世代へ受け継ぐことができる時代に左右されない美
絞りは人類最古の染色法として、今なお多くの人を魅了し続けています。
また、一般的な振袖のように流行というものがあまりなく、次世代へ受け継いでいけることも大きな魅力。
③華やかで品がある
華やかさだけでなく上品さを兼ね備えているのでご自身だけでなく、場を華やかに彩ります。
成人式はもちろん、結婚式やパーティーなどの場面でも着れるのがいいわね。
総絞りの振袖の注意点
ここでは総絞りの振袖についての注意点を3つご紹介!
身長制限
総絞りの振袖の場合、身長制限があります。160cm後半以上の方は厳しいでしょう。
絞りの風合いを残したままお召いただくには160cm前半までの方がおすすめです。
総絞りではなく、部分絞りのタイプになると身長の髙い方でもお召いただくことは可能です。
振袖のメーカーやブランド、絞りの技法などにもよって異なってくるので専門の方に問い合わせてみてください。
重みに注意
絞りの特徴である凹凸の風合いを残すためには、上に重いものをのせないことが大事です。
保管の際はできるだけ上に何ものせないようにしてください。
湿気に注意
絹の着物全般にいえることですが、特に絞り製品は水分、湿気に注意が必要です。
水分を含むことで絞り粒がくずれたり、色落ちの原因になりますので防水加工をおすすめします。
絞りの最高峰ブランド「藤娘きぬたや」
「藤娘きぬたや」は近年、有名な元卓球選手やスポーツ選手が着用したことで注目をあつめております。
きぬたやの絞りは「誰も創ることが出来ない絞り、誰も創ろうとしない絞り」をコンセプトに日本を代表する圧倒的な技術力を誇っていて、「宴」という作品は、メトロポリタン美術館にて永久所蔵されています。
【きぬたやの特徴①】一粒の細かさ~プラス2プラス4の美~
通常は「45立て」といい1尺5分(約40cm)の幅に45粒の絞りが施されますが、藤娘きぬたやの製品の「45立て」は47粒が基準です。
これは、絶えずより高度な技術に挑戦するきぬたやならではのこだわり。このプラス2粒の違いがさらい美しい絞りへとつながっていきます。
また、江戸期に存在したという「本疋田60立て」を十数年の歳月をかけ、絞り職人養成にも成功。伊藤嘉秋氏は、不可能とされた「本疋田70立て」にも成功しました。
また、きぬたやの本疋田絞りは、一粒あたり8回絹糸で括るところを12回括ることによって一粒一粒の白場が多く、中心の点が針のようにとがっています。
【きぬたやの特徴②】色合い~絞りと友禅の融合~
「藤娘きぬたや」は、京鹿の子絞りと京友禅の技術を融合し昇華させることで誰も真似できない最高峰の絞りを生み出しました。
括ったまま布地に筆で色を挿す「水ぼかし」という特殊技法を使っています。絞りの風合いを活かした独特の優雅で優しい色合いはきぬたやならではです。総絞りのなかでここまで色彩豊かに色を挿せるのは至難の業なのです。
【きぬたやの特徴②】地落ち~美の間合い~
絞りで模様と模様の間の無地の空間を「地おち」といいます。
この「地おち」の幅が狭いほど難易度が高いとされており「藤娘きぬたや」はこの地落ちの間隔を極限まで追求し、模様の躍動感を生み出しています。
藤娘きぬたやの商品
きもの蝶屋では「藤娘きぬたや」の作品を常時取り揃えております。メーカーとの直接取り引きで全国でも屈指の品揃えと販売実績です。
まとめ
ここまで絞りについて、総絞りの振袖に関することを紹介してきました。
総絞りの振袖はやはり美しいですよね。
総絞りに魅了された方々の参考になれば幸いです。
きもの蝶屋